指定管理と業務委託の違いは何か?メリットとデメリットや法律的な違いを専門の行政書士が徹底解説


指定管理者制度と業務委託は根拠となる法律が違う

指定管理者制度に似た制度として、業務委託があります。どとらも地方公共団体の施設などの運営に民間企業が参画する場合に使用される仕組みです。両者は根拠となる法律も全く違うため異質の制度ですが、民間人にはその違いがわかりにくくなっています。そこで、このページでは両者の違いを解説します。

あわせて、民間業者としては指定管理者の指定を受けるのと業務委託を受けるのではどちらのほうがビジネス上のメリットがあるのかについても、具体的に解説します。

指定管理者制度とは

地方自治法 244 条による指定管理者制度は、行政処分の一種である「指定」により公の施設の管理権限を当該指定を受けた者に委任するものです。指定管理者制度では、指定管理者を指定する手続き、指定管理者が行う管理の基準、業務の範囲等の必要事項を条例において規定したうえで、指定管理者を選定し議会の議決を経た後に行政処分として「指定」します。

公の施設とは?

「公の施設」とは、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するために普通地方公共団体が設ける施設をいいます(地方自治法第244条1項参照)。

地方自治法第二百四十四条(公の施設)

普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。

上記の条文から「公の施設」の定義を整理すると、以下の要件に分けることができます。

  1. 住民の利用
  2. 施設を設置する普通地方公共団体の住民の利用
  3. 住民の福祉を増進する目的
  4. 施設
  5. 普通地方公共団体が設置

上記の要件を順に検討します。

住民の利用

公の施設は、「住民の利用」に供される施設である必要があります。すなわち、公の目的のために設置された施設であっても、「住民の利用」に供することを目的としないものは公の施設ではありません。

具体的には、純然たる試験研究所や自治体の庁舎などは公の施設に該当しません。これらの施設は「住民の利用」に供されることを予定していないからです。

施設を設置する普通地方公共団体の住民の利用

公の施設の利用を供される対象となる「住民」は、原則として当該施設を設置する普通地方公共団体の住民である必要があります。

したがって、国民の利用に供するために設ける施設であっても、当該普通地方公共団体の区域内に住所を有する者の利用に全く供しないものは公の施設ではありません。

住民の福祉を増進する目的

公の施設における住民の利用に供する目的は、直接住民の福祉を増進するためである必要があります。すなわち、利用そのものが福祉の増進となるものでなければなりません。

したがって、普通地方公共団体の収益事業のための施設は住民の利用に供しても公の施設ではないとされます。具体的には、競輪場や競馬場などは公の施設には該当しません。これらは、普通地方公共団体の収益事業のための施設であり、直接住民の福祉を増進するための施設ではないからです。

施設

公の施設は「施設」である必要があります。すなわち、公の施設は物理的な施設を中心とする概念であり、人的な側面(ソフト面)は必ずしもその要素ではありません。

普通地方公共団体が設置

国その他普通地方公共団体以外の公共団体が設置するものは公の施設ではありません。ただし、特別地方公共団体のうち、特別区、地方公共団体の組合及び財産区については、公の施設に関する規定が準用されています(283条第1項、292条、294条第1項)。

公の施設の具体例

公の施設の具体例として、公園,野球場,市営駐車場,市営住宅,図書館,市民会館,観光施設,福祉施設などが挙げられます。

一方で、公の施設に該当しない例として、試験研究所、競馬場、観光ホテル、物品陳列所、官公庁舎などが挙げられます。

なお、学校教育法により「設置管理主義」が取られている学校、管理者を特定のものに限定している河川、道路、下水道などは指定管理者制度の導入は出来ません。

学校教育法第五条 学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定のある場合を除いては、その学校の経費を負担する。

指定管理者が地方自治体の管理を代行する

以上のように、私法上の「契約」によって外部の民間業者に委託するいわゆる「業務委託」と違って、指定管理者制度では指定管理者が施設の管理を代行します。したがって、指定管理者は次のようなことが可能となります。

  1. 利用者からの料金を自らの収入として収受すること(従来の管理委託制度でも可能)。
  2. 条例により定められた枠組みの中で、地方公共団体の承認を得て自ら料金を設定すること。
  3. 個々の使用許可を行うこと。

業務委託を受けても当該施設を自由に運営することはできません。しかし、指定管理者の指定を受ければ当該施設を民間の視点で柔軟に運営することが可能です。

また、業務委託は単年度契約になることが多いですが、指定管理者の指定は複数年が一般的です。一般的には、指定管理者の指定は5年程度で更新となっています。したがって、中長期的な経営ビジョンをもって施設等を運営することが可能となります。

自治体ではなく指定管理者が施設等の使用許可を行う

指定管理とは、施設の管理に関する権限を指定管理者に委任して行わせるものであり、施設の使用許可も行うことができます。すなわち、指定管理者は地方公共団体に代わって、行政処分に該当する「使用許可」を行うことができます。地方公共団体は、設置者としての責任を果たす立場から指定管理者を監督することになります。

例えば、大きなホールや体育館などの指定管理者となった場合には、どのような団体に使用許可を出すかを指定管理者自身が決定できるため、独自の大型企画やイベントを運営することが可能となります。

しかし、業務委託の場合には、例えば「料金収受」や「利用者への鍵の受け渡し」など単純・定型的な作業を手順に従って実施するだけであり、料金を設定したり利用者を選定したりする自由はありません。もちろん、企画展やイベントを運営することもできません。

施設等の使用料金も指定管理者が決定できる

利用料金についても、条例で定める範囲内で指定管理者が決定し、当該普通地方公共団体が承認します。

例えば、指定管理者としてスポーツ施設の運営を担う場合には、指定管理者が自らの経営判断によって使用料金を決定し、その使用料金は指定管理者の収入として受け取ります。したがって、民間の目線で柔軟な料金設定をするなど自由な施設運営が可能です。

このように、民間事業者の立場からは業務委託を受けるよりも指定管理者として指定を受けるほうが、はるかにビジネスとしての魅力が大きいです。さらに、指定管理の指定期間は複数年が一般的なので一定期間は継続的な売上を得ることが可能となり、企業の経営基盤の強化に繋がります。

指定管理者制度と業務委託制度の比較

指定管理者制度に似たものとして、公の業務を企業に委託する「業務委託」制度があります。

業務委託制度と指定管理者制度には、どのような違いがあるのでしょうか。両者の違いは以下の通りです。

指定管理者制度 業務委託
受託主体 法人、その他の団体 法人格は不要。ただし、個人は不可。 限定はない。 議員、長についての禁止規 定あり(地方自治法第 92 条の 2、同法142 条)
法的性格 「管理代行」 指定(行政処分の一種)により、公の施設の管理権限を指定を受けたものに委任。 指定処分は請負契約と異なるため入札手続きの対象とならない 「行政契約(私法上の契約関係)」 契約に基づく個別の事務または業務の執行の委託
公の施設の管理権限 指定管理者が有する。 「管理の基準」「業務の範囲」は、条例で定める。 設置者たる地方公共団体が有する。
施設の使用許可等 指定管理者が行うことができる。 受託者はできない。
管理の基準及び業務の範囲の規定方法 条例で定める。 契約で定める。
指定管理者(受託者)の決定 施設ごとに,議会の議決を経て決定。 議会の議決は不要。
指定管理者(受託者)に管理を行わせる期間 施設ごとに,議会の議決を経て決定。 施設ごとに契約で定める。
基本的な利用条件の設定 地方公共団体が設定し,指定管理者は設定できない。 条例で定めることが必要。 地方公共団体が設定し,受託者は設定できない。
公の施設の設置者としての責任 地方公共団体 地方公共団体
利用者に損害を与えた場合 地方公共団体にも責任が生じる場合がある。 地方公共団体にも責任が生じる場合がある。
利用料金の扱い 指定管理者が自らの収入とすることができる。 条例で定める範囲内で料金設定が可能。 受託者は自らの収入とすることは不可。
指定管理者(管理受託者)による管理に不都合がある場合の措置 指定の取消し、管理業務の停止命令(不利益処分)。 債務不履行に基づく契約の解除など。

新潟市・札幌市のサイトを参考に作成

公の施設に関する業務についても、一部の分野については従来から業務委託として民間事業者に委託することが可能でした。指定管理者制度の導入により、公の施設の管理については業務委託ではなく指定管理者を指定することになります。ただし、個々の具体的業務について一部を、指定管理者が第三者に委託することは可能です。

また、指定管理は「請負」には当たらないため地方議員の兼業禁止規定は適用されません。

【参考】地方自治法第九十二条の二

普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。

指定管理と業務委託では法的性質が全く違う

指定管理者の「指定」は、行政法総論でいう講学上の「行政行為(行政処分)」です。一方で、業務委託契約は「契約」なので、講学上の「行政契約」となります。これらの法律上の位置づけは対極にあるといえます。以下に、それぞれの性質について解説します。

行政行為(行政処分)の性質

公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものをいいます。これを整理すると、以下のような性質が挙げられます。

  1. 法律・条例の根拠がある。
  2. 直接に法的効果を発生させる。
  3. 個別具体的な権利義務を確定する。
  4. 行政庁の一方的な意思表示で法効果が生じる。
  5. 対外的な効果を有する。

2の「直接法効果性」については、事実行為とは異なり私人の権利義務を変動させる法的効果が直接に生じることをいいます。これに対して、行政指導などの事実行為である場合には、私人はそれに従う法的義務がありません。

3の「個別具体性」については、一般人に対する規定ではなく、特定の私人に対する行為であることを指します。地方自治体の議会で制定される条例などは一般人を対象とした抽象的規範です。それに対し、行政行為は特定私人を対象とした行為であることが必要です。

4の「権力性」については、相手方私人の同意を要せず、一方的に命令できることをいいます。次項で解説する「行政契約」は相手方との合意が必要である(両当事者の合意)のに対し、行政行為(行政処分)は相手方との合意は不要です。

5の「対外性」については、行政組織の外部にいる私人に対する行為であることを指します。行政組織内部で用いられるにすぎない「通達」や「訓令」と異なり、行政行為は外部に発せられることが必要です。

指定管理者制度における「指定」は「行政処分」であり、上記のような性質を持っています。

行政契約の性質

行政庁が私人たる相手方と対応立場で契約を締結することをいいます。契約は私的自治の原則が妥当しますので、法律上の根拠がなくても、両当事者が合意すれば締結することは可能です。

このように、行政契約はあくまでも「契約」であり、両当事者の合意が必要です。したがって、行政行為のように「行政庁の一方的な意思表示」で契約の効果を発生させることはできません。私人間で交わされる「契約」の一方当事者がたまたま行政なだけであり、一般私人間で締結される契約と原則として異なる点はありません。

業務委託は民法上の「契約」であり、上記のような性質を持ちます。

指定管理ではなく業務委託にすべき業務

両者の違いについて、限界事例を具体的に検討してみましょう。例えば、下記のような公の施設に「関する」諸業務については、地方自治法上の指定管理者制度ではなく「業務委託」に該当します。

  1. 事実行為(施設の管理、警備、施設の清掃、展示物の維持補修、植栽の管理)
  2. 管理権限を当該地方公共団体に留保したうえで、管理や処分の方法についてあらかじめ地方公共団体が設定した基準に従って行われる定型的行為(入場券の検認、利用申込書の受理、利用許可書の交付)→管理権限が管理者に移らないため指定管理ではない。
  3. 私人の公金取扱規定(地方自治法第243条、同施行令第158条)に基づく使用料等の収入の徴収
  4. 当該施設運営に関するソフト面の企画(当該施設における各種行事の企画等)

なお、公の施設の管理を指定管理者に行わせる場合には、法律の規定に基づき地方公共団体による適正な管理を確保した上で指定管理者にその管理を行わせることとした指定管理者制度の趣旨から、上記1~4の業務を私法上の業務委託契約(講学上の行政契約)により同一の民間事業者に対して包括的に行わせることは原則として適当ではありません。包括的に行わせる場合は当該民間事業者を指定管理者に指定し管理権限を委任すべきです。

この点については、自治体の担当者から多く問い合わせをいただいております。指定管理の方法を採用するためには条例で定められた手続を行う必要があるため「包括的な業務委託」で実施したいという実務上の要請が多いようですが、指定管理者制度の趣旨からはかかる方法は好ましくないと言えます。個別具体的な適否については弊所へご相談ください。

協定書のチェックが重要

また、上記のような「業務委託」については、自己の管理権限の範囲内において指定管理者が当該業務を外部の業者に委託することが可能です。この点について業務委託の可否は「協定書」において定めることとなりますので、協定書の内容を専門の行政書士に依頼してチェックすることが必要です。

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