記事の概要
派遣の可否
指定管理の指定を受けた場合に、従来から当該施設に勤務していた公務員を、指定管理者となる法人へ自治体から派遣することができるのでしょうか。
自治体職員の指定管理者への派遣は、当該自治体で条例が制定されていれば、「公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」に基づき派遣可能です。今回は、「公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」の要件を解説します。
派遣可能な対象団体(法2条)
対象となるのは、「公益法人等」です。これは、その業務が当該地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有するもので、施策の推進を図るため人的援助が必要であると条例で定めるもの(公益的法人等)と規定されています。
政令では、「医療法人」「学校法人」「社会福祉法人」等が挙げられています。
派遣実施の取決め(法2条)
派遣を実施する場合には、前項で挙げた「公益的法人等」との間で取決めを交わします。この取決めは、「協定」や「覚書」などの名称で交わされることもあります。
指定管理業務を開始するにあたって、協定書と同時に締結するケースが多いです。
職員からの同意(法2条)
管理者たる自治体から指定管理者へ職員を派遣する場合には、任命権者によって当該職員から同意を取得することが義務付けられています。
公務員として自治体に勤務するのと指定管理者へ出向して勤務するのでは勤務形態が異なるため、当該職員本人の意志に反する派遣は認められません。
派遣期間(法3条)
3年を超えることはできません。ただし、派遣団体や職員の同意を得て5 年を超えない範囲内において延長が可能です。
派遣職員の給与(法6条)
職員派遣の期間中は、自治体からは給与を支給しないのが原則です。
但し、当該業務が地方公共団体の委託を受けて行う業務、地方公共団体と協働して行う業務、若しくは地方公共団体の事務・事業を補完し、支援すると認められる業務で、事業もしくは事務の効率的な実施が図られると認められ場合やこれら業務が派遣先団体の主たる業務である場合には、派遣職員に対し派遣期間中条例で定める所により給与を支給することができます。
指定管理者は、この「地方公共団体の委託を受けて行う業務」に該当するため、指定管理者が派遣可能な対象団体であれば、自治体からの職員派遣を受けることが可能です。
条例の制定
上記で解説した「公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」に基づき、各地方公共団体において「公益法人等への職員の派遣等に関する条例」が制定されています。
この枠組みや地方自治法の規定に準拠した「人事委員会規則」、「退職手当条例」、「職員の分限に関する条例」などが各地方公共団体毎に存在し、これらの制度的枠組みに基づき、職員の処遇のあり方が規定されています。
行政書士に相談
指定管理者が自治体職員を受け入れる際には、本記事で説明した内容を踏まえて、当該自治体を取決めを交わす必要があります。受け入れ職員の人件費額によっては、指定管理業務の収益性に大きな影響を及ぼす場合があります。
指定管理における職員受け入れについては、専門の特定行政書士にご相談ください。
公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成十二年四月二十六日法律第五十号)
最終改正:平成二四年八月二二日法律第六七号
(目的)
第一条 この法律は、地方公共団体が人的援助を行うことが必要と認められる公益的法人等の業務に専ら従事させるために職員(地方公務員法 (昭和二十五年法律第二百六十一号)第四条第一項 に規定する職員をいう。第七条を除き、以下同じ。)を派遣する制度等を整備することにより、公益的法人等の業務の円滑な実施の確保等を通じて、地域の振興、住民の生活の向上等に関する地方公共団体の諸施策の推進を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。
(職員の派遣)
第二条 任命権者(地方公務員法第六条第一項 に規定する任命権者及びその委任を受けた者をいう。以下同じ。)は、次に掲げる団体のうち、その業務の全部又は一部が当該地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有するものであり、かつ、当該地方公共団体がその施策の推進を図るため人的援助を行うことが必要であるものとして条例で定めるもの(以下この項及び第三項において「公益的法人等」という。)との間の取決めに基づき、当該公益的法人等の業務にその役職員として専ら従事させるため、条例で定めるところにより、職員(条例で定める職員を除く。)を派遣することができる。
一 一般社団法人又は一般財団法人
二 地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第五十五条 に規定する一般地方独立行政法人
三 特別の法律により設立された法人(前号に掲げるもの及び営利を目的とするものを除く。)で政令で定めるもの
四 地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十三条の三第一項 に規定する連合組織で同項 の規定による届出をしたもの
2 任命権者は、前項の規定による職員の派遣(以下「職員派遣」という。)の実施に当たっては、あらかじめ、当該職員に同項の取決めの内容を明示し、その同意を得なければならない。
3 第一項の取決めにおいては、当該職員派遣に係る職員の職員派遣を受ける公益的法人等(以下「派遣先団体」という。)における報酬その他の勤務条件及び当該派遣先団体において従事すべき業務、当該職員の職員派遣の期間、当該職員の職務への復帰に関する事項その他職員派遣に当たって合意しておくべきものとして条例で定める事項を定めるものとする。
4 前項の規定により第一項の取決めで定める職員派遣に係る職員の派遣先団体において従事すべき業務は、当該派遣先団体の主たる業務が地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務である場合を除き、地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務を主たる内容とするものでなければならない。
(職員派遣の期間)
第三条 職員派遣の期間は、三年を超えることができない。
2 前項の期間は、任命権者が特に必要があると認めるときは、派遣先団体との合意により、職員派遣をされた職員(以下「派遣職員」という。)の同意を得て、職員派遣をした日から引き続き五年を超えない範囲内において、これを延長することができる。
(派遣先団体の業務への従事等)
第四条 派遣職員は、その職員派遣の期間中、第二条第一項の取決めに定められた内容に従って、派遣先団体の業務に従事するものとする。
2 派遣職員は、その職員派遣の期間中、職員派遣された時就いていた職又は職員派遣の期間中に異動した職を保有するが、職務に従事しない。
(派遣職員の職務への復帰)
第五条 任命権者は、派遣職員が派遣先団体の役職員の地位を失った場合その他の条例で定める場合であって、その職員派遣を継続することができないか又は適当でないと認めるときは、速やかに当該職員派遣に係る派遣職員を職務に復帰させなければならない。
2 派遣職員は、その職員派遣の期間が満了したときは、職務に復帰する。
(派遣職員の給与)
第六条 派遣職員には、その職員派遣の期間中、給与を支給しない。
2 派遣職員が派遣先団体において従事する業務が地方公共団体の委託を受けて行う業務、地方公共団体と共同して行う業務若しくは地方公共団体の事務若しくは事業を補完し若しくは支援すると認められる業務であってその実施により地方公共団体の事務若しくは事業の効率的若しくは効果的な実施が図られると認められるものである場合又はこれらの業務が派遣先団体の主たる業務である場合には、地方公共団体は、前項の規定にかかわらず、派遣職員に対して、その職員派遣の期間中、条例で定めるところにより、給与を支給することができる。
(派遣職員に関する地方公務員等共済組合法 の特例)
第七条 派遣職員に対する地方公務員等共済組合法 (昭和三十七年法律第百五十二号)の規定の適用については、派遣先団体の業務を公務とみなす。
2 派遣職員は、地方公務員等共済組合法第三十九条第三項 の規定にかかわらず、引き続き職員派遣をされた日の前日において所属していた地方公務員共済組合(同法第三条第一項 に規定する地方公務員共済組合をいう。)の組合員であるものとする。
3 派遣職員に関する地方公務員等共済組合法 の規定の適用については、同法第百十三条第二項 各号列記以外の部分中「地方公共団体(市町村立学校職員給与負担法 (昭和二十三年法律第百三十五号)第一条 又は第二条 の規定により都道府県がその給与を負担する者にあつては、都道府県。以下この条において同じ。)」とあるのは「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成十二年法律第五十号)第二条第三項に規定する派遣先団体(以下「派遣先団体」という。)」と、同項各号中「地方公共団体」とあり、並びに同法第百十六条第一項中「地方公共団体の機関、特定地方独立行政法人又は職員団体」とあり、及び「地方公共団体、特定地方独立行政法人又は職員団体(第三項において「地方公共団体等」という。)」とあるのは「派遣先団体」と、同項中「第百十三条第二項(同条第六項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は同条第四項及び第五項並びに」とあるのは「第百十三条第二項及び」と、同条第三項中「第百十三条第四項第二号に掲げる費用及び同条第五項に規定する費用(長期給付に係るものに限る。)並びに厚生年金保険法 」とあるのは「厚生年金保険法 」と、「地方公共団体等」とあるのは「派遣先団体」とする。
(派遣職員に関する子ども・子育て支援法 の特例)
第八条 派遣職員に関する子ども・子育て支援法 (平成二十四年法律第六十五号)の規定の適用については、派遣先団体を同法第六十九条第一項第三号 に規定する団体とみなす。
(派遣職員の復帰時等における処遇)
第九条 地方公共団体は、派遣職員が職務に復帰した場合における任用、給与等に関する処遇及び職員派遣後職務に復帰した職員が退職した場合(派遣職員がその職員派遣の期間中に退職した場合を含む。)の退職手当の取扱いについては、部内の職員との均衡を失することのないよう、条例で定めるところにより必要な措置を講じ、又は適切な配慮をしなければならない。
(特定法人の業務に従事するために退職した者の採用)
第十条 任命権者と特定法人(当該地方公共団体が出資している株式会社のうち、その業務の全部又は一部が地域の振興、住民の生活の向上その他公益の増進に寄与するとともに当該地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有するものであり、かつ、当該地方公共団体がその施策の推進を図るため人的援助を行うことが必要であるものとして条例で定めるものをいう。以下同じ。)との間で締結された取決めに定められた内容に従って当該特定法人の業務に従事するよう求める任命権者の要請に応じて職員(条例で定める職員を除く。)が退職し、引き続き当該特定法人の役職員として在職した後、当該取決めで定める当該特定法人において業務に従事すべき期間が満了した場合又はその者が当該特定法人の役職員の地位を失った場合その他の条例で定める場合には、地方公務員法第十六条 各号(第三号を除く。)の一に該当する場合(同条 の条例で定める場合を除く。)その他条例で定める場合を除き、その者が退職した時就いていた職又はこれに相当する職に係る任命権者は、当該特定法人の役職員としての在職に引き続き、その者を職員として採用するものとする。
2 前項の取決めにおいては、同項の要請に応じて退職し引き続き当該特定法人に在職する者(以下「退職派遣者」という。)の当該特定法人における報酬その他の勤務条件並びに当該特定法人において従事すべき業務及び業務に従事すべき期間、同項の規定による当該退職派遣者の採用に関する事項その他当該退職派遣者が当該特定法人の業務に従事するに当たって合意しておくべきものとして条例で定める事項を定めるものとする。
3 前項の規定により第一項の取決めで定める退職派遣者の特定法人において従事すべき業務は、当該特定法人の主たる業務が地域の振興、住民の生活の向上その他公益の増進に寄与し、かつ、地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務(以下この項において「公益寄与業務」という。)である場合を除き、公益寄与業務を主たる内容とするものでなければならない。
4 第二項の規定により第一項の取決めで定める退職派遣者の特定法人において業務に従事すべき期間は、同項の要請に応じて退職をする日の翌日から起算して三年を超えない範囲内で定めるものとする。
5 第一項の規定による採用については、地方公務員法第二十二条第一項 の規定は、適用しない。
(退職派遣者に関する地方公務員等共済組合法 の特例)
第十一条 特定法人又は退職派遣者は、地方公務員等共済組合法第百四十条第一項 に規定する公庫等又は公庫等職員とみなして、それぞれ同条 (第三項を除く。)の規定を適用する。この場合において、同条第一項 中「役員及び常時勤務に服することを要しない者」とあるのは「常時勤務に服することを要しない者」と、「退職した場合(政令で定める場合を除く。)」とあるのは「退職した場合」と、同条第二項第一号 中「五年」とあるのは「三年」とする。
(退職派遣者の採用時における処遇等)
第十二条 地方公共団体は、退職派遣者が第十条第一項の規定により職員として採用された場合における任用、給与等に関する処遇及び同項の規定により採用された職員が退職した場合の退職手当の取扱いについては、部内の職員との均衡を失することのないよう、条例で定めるところにより必要な措置を講じ、又は適切な配慮をしなければならない。
2 第十条第一項の規定により採用された職員(同項の規定によりかつて採用されたことのある職員を含む。)に対する地方公務員法第二十九条 の規定の適用については、同条第二項 中「又は」とあるのは「若しくは」と、「使用される者」とあるのは「使用される者又は公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成十二年法律第五十号)第十条第二項に規定する退職派遣者」と、「在職した後、引き続いて当該退職を前提として」とあるのは「在職した後、引き続いて当該退職を前提として又は同条第一項の規定に基づいて」とする。