記事の概要
- この記事では、指定管理者制度とは何か知りたい方に向けて、法律上の根拠・位置づけや手続きの流れについて行政書士が解説します。
指定管理者制度とは?
指定管理者制度とは、地方自治法の一部を改正する法律(平成15年法律第81号)により制度化されたものです。地方自治法の244条以下に規定され知恵ます。それまで実施されていた「管理委託制度」に代わって、新しく導入されました。
指定管理者制度とは、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときに、普通地方公共団体が条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該普通地方公共団体が指定するもの(「指定管理者」)に、当該公の施設の管理を行わせることをいいます(地方自治法第244条の2 第3項)。
簡単に言うと、「公の施設」を地方公共団体に代わって「指定管理者」に管理させる制度が「指定管理者制度」です。この指定管理者制度を導入するためには、指定管理者を決める手続きについて条例を作る必要があります。
指定管理者制度の目的
多様化する市民ニーズにより効果的、効率的に対応するため、公の施設の管理に民間のノウハウを活用しながら、市民サービスの向上と経費の節減を図ることを目的に創設されました。
制度目的を具体的に列記すると、
- 民間事業者の活力を活用した住民サービスの向上
- 施設管理における費用対効果の向上
- 管理主体の選定手続きの透明化
が挙げられます。
指定管理者として指定申請する際には、事業計画書やプレゼンテーションにおいて上記の制度趣旨を意識することが必要です。当事務所では、行政手続きの専門家として、地方自治法の趣旨を踏まえた法的思考の下で行政書士が書面を作成します。
指定管理者になれるのはだれか
指定管理者制度が導入されたことにより、これまで公共的な団体等に限定されていた公の施設の管理運営を、民間事業者も含めた幅広い団体にも委ねることができるようになりました。
改正前は、「管理委託制度」だっため管理主体は公共的な団体に限定されていました。しかし、改正後の「指定管理者制度」では、法人その他の団体であれば指定管理者になれるようになりました。
今後は、個別法の規定の範囲で、自治体の判断により「法人その他の団体」に公の施設の管理を委ねることが可能となりました。すなわち、団体であれば法人の資格の有無に関係なく、民間事業者から市民団体等まで対象となります。
指定管理者として想定される主体は、個人を除く幅広い団体です。株式会社などの営利法人・社団法人・財団法人・NPO法人など法人格を持った団体のほか法人格を持たない市民団体なども指定管理者になることができます。
指定管理者制度の対象となる施設
公の施設
指定管理者が管理運営主体になり得る対象施設は、「公の施設」と規定されています。
「公の施設」とは、「住民の福祉を増進する目的をもって、住民の利用に供するため」に、地方公共団体が設ける施設と規定されています(地方自治法第244条)。 1.住民の利用に供するためのもの、2.当該地方公共団体の住民の利用に供するためのもの、3.住民の福祉を増進する目的をもって設けるもの、4.地方公共団体が設けるもの、5.施設であること、の5つの要件を満たすものとされています。
- 住民の利用に供するためのもの
- 当該地方公共団体の住民の利用に供するためのもの
- 住民の福祉を増進する目的をもって設けるもの
- 地方公共団体が設けるもの
- 施設であること
例えば、福祉施設や病院、図書館、市民会館、保育所、児童館、体育館などの公的施設が挙げられます。
なお、地方公共団体は、「公の施設」を設置するにあたり、所有権を取得することまでは必要とされません。所有権が他者に留保されたままで、賃借権や使用貸借権等によって施設を住民に利用させる権原を取得した場合においても、当該施設を「公の施設」とすることができます(講学上の「他有公物」)。
行政事務執行施設は含まれない
自治体の庁舎などの「行政事務執行施設」は指定管理者制度の対象に含まれるません。これらの施設は「住民の利用に供するため」のものではないからです。
この点、総務省の見解では廃棄物処理センター(清掃工場)や給食センターなどの公的施設も、自治体の庁舎と同様に行政事務執行施設であり、指定管理者制度の対象となるにはあたらないと解しているようです。しかし、これらの施設は自治体の庁舎とは違い、一義的に「住民の福祉を増進する目的をもって、住民の利用に供するため」に該当しないとは判断できないため、当該自治体の長が総務省と異なる解釈を行う余地もあるといえます。
指定管理者制度に関する規定
公の施設(第244条)
普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。
条例の制定(第244条の2第3項・第4項)
公の施設の目的を効果的に達成するため必要がある場合は、条例の定めるところにより、法人その他の団体を指定管理者とし、公の施設の管理を行わせることができる。
公の施設において指定管理者制度を導入することとした場合に条例で定めるべき事項
- 指定の手続(申請、選定、事業計画の提出等)
- 管理の基準(休館日、開館時間、使用制限の要件)
- 業務の具体的範囲(施設・設備の維持管理、使用許可)
指定の方法(第244条の2第5項・第6項)
上記の条例に従い、指定の期間等を定め、議会の議決を経て、指定管理者を指定。
利用料金制(第244条の2第8項・第9項)
公の施設の利用に係る料金を指定管理者が自らの収入として収受することができる。
事業報告書の提出(第244条の2第7項)
指定管理者に指定された団体は、毎年度終了後、事業報告書を提出。
これにより、管理業務の実施状況や利用状況、管理経費等の収支状況等、管理の実態を把握。
地方公共団体の長による指示、指定の取消し、業務の停止命令(第244条の2第10項・第11項)
地方公共団体の長は、指定管理者に対し必要な指示を行うことができる。
指定管理者が指示に従わない場合等指定の継続が不適当な場合には、指定を取消し、又は管理業務の全部又は一部の停止を命令。
総務省サイトを参考に作成
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